演劇 あるいは 読書

2008年8月24日 (日)

あの日の チェーホフ「かもめ」公演 

8月は名古屋まで出向き、チェーホフ「かもめ」の舞台を観ました。

愛知厚生年金会館での公演でしたが、

観客は殆ど女性の方々ばかり、

ご贔屓の役者さんがいらっしゃるのかも。そう言うわたくしも…

Photo 久しぶりの名古屋、

彼女との待ち合わせは「銀の時計」の前、

一緒する彼女の職場は駅の近くですって。

駅構内は夏休みの人々で混雑(多分)早くに到着したわたくしは、

前もってショッピング街を調べ把握していたのにも関わらず、

結局、駅構内のマーメイドカフェの片隅で、

珈琲をいただきながら彼女を待ちました。

平日勤務の彼女は、競走馬のように駆けてくるに違いない。

ガラス窓越しに見られる光景、よその街、よその駅のざわめきは、

若いころも…老いても…旅人の気分にさせてくれるから待ちましょ。と、

自己満足していただけの話なのですよ。

Photo_3 さて、ロシアで「かもめ」の戯曲が出版されたのは1895年、

日本の年号(元号)では明治28年にあたります。

百年以上も前の作品です。

現在とは時代背景も女性の生き方も違いますわね。「かもめ」の物語には、

都会に憧れ有名になることに憧れる、女優志願の娘ニーナがいます。

作家志望であり物書きをしながらも、生きることの無常観に苛まれる青年がいます。

ふたりは恋仲でありましたが、

ニーナは田舎の湖畔を訪れた高名な作家であるおじさまに、優しくされ、

一途になってしまう。都会に戻るという人を追いかけてしまう。

高名な作家は青年の母である有名な女優の恋人でした。

男性のエゴが剥き出しになるときは、時代が変わろうと有様は似ているのかも知れません。

案の定、都会でニーナは捨てられる。2年の月日が流れます。

湖畔に戻ったニーナは青年の愛情が変わらぬままであることを知りますが、

「忍耐」がすべてと再び湖畔を飛び立ってゆくことを青年に告げ、

運命に立ち向かう術を、毅然と言い放ちます。

ニーナとの別れ以来、作家として陽のあたる場所を得た青年でしたのに、

無常と思う人生観から抜けきれず、青年は自ら破滅してしまうのです。

Photo_4 舞台はユーモアが散りばめられ、

戯曲の悲喜劇があますところなく表現されました。

台詞の多さをよどみなく発声される役者さんたちの凄さには

観劇の度毎に圧倒されます。

青年の役柄は藤原竜也さんが演じられました。有望な俳優さんですわね。

女性の自我の目覚めといえば、イプセン「人形の家」戯曲の名作も、

「かもめ」と同時代、時代背景を同じくしてます。

ヒロイン・ノラは夫の人形でしかなかった結婚生活に気付かされ、

人間でありたい、人間を生きたいと、

夫と子供の居る家を去ること、その決断をしました。

世間体に捉われながらの人生は、昨今でもあることですし、

女性であるが故の辛苦があることを思うと、

自我の目覚めとは…

今の世にも存在する普遍のテーマかも知れませんですね。

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2008年7月16日 (水)

ああ 悲恋十年

Photo 田宮虎彦著「悲恋十年」 角川文庫短編集

昭和25年から31年までの作品集です。

長い長い年月、本棚に置いていたまま、再読することもしなかった、

僅か40ページほどの短編です。

本棚の本を整頓しながら、見つけた時点で整頓の手を休め、

しばし読み耽ってしまった。

突然に断ち切られた純愛、

戦時下での画学生がヒロインなのです。

言葉にすれば、逃げるように去った男の姿を追い求める。

腑に落ちないまま流転をしても、相手への愛情はブレない。

結末では別れたそのわけを知らされるのですが、皮肉にもそのわけとは…

一気に読み終えて、ああ、重い。

Photo_2純愛、純潔、相思相愛、

すべては純真から始まり十年が過ぎ去った。

ヒロインには作家の愛情がそそがれますので、

そこは救いでもありますのね。

Photo_3 Photo_4

後日、

浜松のフレッシュネスバーガーに立ち寄れば、

襟足に少女っぽさの残る女性が、ご本を読みながらのティータイム、

わたくしは連れと窓辺に座り、珈琲だけ淹れていただきティータイム、

少女のような娘さんは、何のご本を読んでいるのかしら?

若い時は速読した本を再読すれば、

歳を重ねた分だけは文字を追うことが遅くなり、

文字を拡大鏡で追う場合もあるからして、さらさらと読みこなせない。

ましてや文庫本は小さな文字ををまさぐらなくてはならず。

「悲恋十年」は痛々しいわと数日間も思いながら、

いつまでも痛々しさが頭を掠める読後感から、

脱却できずにいる自分こそが、痛い人みたいと、

珈琲を手に少したそがれてしまいました。

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